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野球選手のおける肘の痛みや障害と,体幹・下肢の関連性はあるのか?~2020年のレビューから~

小さいころから下半身が硬いとダメってよく言われます・・・
MUDA
病院でも先生から『下半身が硬いから肩肘を痛めてますね』って言われたことがある人もいると思います.
痛いのは肘なのになー・・・
MUDA



2020年のレビューから

本日の話題:
野球選手の肘の痛みや障害と,体幹・下肢の関連性

 運動連鎖

野球のピッチングは,上肢に非常に大きいレベルの力がかかる身体的に要求の高い動作です.

肘の障害は,プロ野球の障害の9.5%を占め,そのうち40%は投手に発生していると言われています.

肘の障害の発生率増加に関連するリスクファクター

肩関節可動域の変化,肘伸展可動域の低下,肩関節後方タイトネスの増加,腱板筋の弱化,肩甲骨機能障害,後弯姿勢 etc...

上記のように,ほとんどの研究では,主に上肢に焦点が当てられています.

しかし,正常な投球動作は下肢から体幹,体幹から上肢へと効率よく力の伝達が起こっています.

これを運動連鎖といいます.

よく現場では,下半身が使えてないとよく聞くと思いますが,これは運動連鎖の破綻を起こしていると考えます.

運動連鎖の破綻とは下図の a のように,正常では下肢→体幹→上肢で大きな山を作りますが,b のように下肢の山が小さいと上肢が無理をして大きな山を作ってしまうわけです.いわゆるこれが下半身が使えておらず,上肢の負担を増加させてしまっているということです.

そこでこのレビューは,体幹や下肢の機能不全は投手の肘障害のリスクを高めるという仮説が立てられています.

結果

この文献では,プレーレベル別に分けてレビューをしています.

全体的に投球障害と下肢・体幹の関連を検討した文献は少なく,中でもMLB選手のようなトッププロの報告は少なかったようです.

股関節の可動域

股関節の可動域について,青少年では股関節の可動域制限が肘障害と関連があるのに対して,MLB選手では腰痛などとの関連性はあるものの,肘の障害とは関連性を認めなかったという報告があります.

具体的には,少年野球選手(15歳以下)を対象とした複数の研究では,ストライド脚の屈曲90°位での内旋可動域制限が肘障害との間に有意な関連性があることが示されています.

一次予防プログラム

少年野球の肘障害と下肢の関連性というテーマでは,トヨタ記念病院の坂田先生(前:横浜市スポーツ医科学センター)のグループが文献の多くを貢献されています.

そこでは上図に書いている一次予防プログラムについてが注目点で,まずはじめに少年野球選手の内側肘障害の発生率を減少させることができる予防プログラムの作成に着手しました.

このプログラムは自宅でもウォーミングアップ中でもできる18のエクササイズで構成されており,

12ヶ月間の研究期間中,このプラグラムを行う介入群では行わないコントロール群と比較して,肘内側障の発生率が49.2%減少しました.

重要なことに,週に1回以上プログラムを完了した選手は,コントロール群と比較して,肘内側障害が発生する可能性が3倍低いことも明らかにしました.

さらに9つのエクササイズに絞り,Yokohama Baseball-9(YKB-9)を作成し,フォローアップの研究がなされています.

この研究の3つの重要な知見

  1. 同じ12ヶ月間に,肘障害のリスクはコントロール群と比較して,介入群で48.5%減少した
  2. 73.4%という高遵守率
  3. 介入群では球速が平均1.43 mph(2.3km)向上した

二次予防の効果については不明ですが,以下の予防プログラムを週に1回以上実施すると野球少年の肘障害を減らすことに有効です.

バランスと動的な神経筋コントロール

高校生や大学生の野球選手においては,バランスや動的な神経筋コントロールの欠如が関連があった項目として挙げられました.

投球動作は高度に統合された動作パターンであり,全身に神経筋の制御と力の発生が要求されるため,先ほどの運動連鎖に沿って,バランスと動的な制御が低下している選手は,結果として肘や肩にかかる高いストレスを適切に減少させる能力が低下し,二次的に上肢の障害を受けやすくなります.

具体的には,下肢の安定性とバランスを維持することができないため,上肢でこの不十分な力を補う必要があります.

難しく書いていますが,簡単に言うと,階段を下りるときに頑張って力入れて下りないですよね?

どちらかというと,こけないように残っている脚でブレーキをかけながら,浮いている脚をコントロールして,下の段に足を着くと思います.

投球動作も同じくほとんどが階段を下りるような遠心性といわれる運動なんですね.

この動きのコントロールする能力が低下している人は,肘を痛めやすいというのが高校生や大学生でみられた結果です.

これらの研究でよく用いられるテストは下図の『Star excursion balance test』です.

このテストの級内変動係数(ICC)は0.78〜0.96で,検者間の信頼性があることが報告されています(Hyong et al., 2014).

よかったら使用してみてください.



文献タイトル

Deal, Matthew Jordan, et al. "Regional Interdependence and the Role of the Lower Body in Elbow Injury in Baseball Players: A Systematic Review." The American Journal of Sports Medicine (2020): 0363546520910138.

https://journals.sagepub.com/doi/full/10.1177/0363546520910138?casa_token=jcFneOZlQUwAAAAA%3AsgbG4hDaydfwqhaFKWy8OokKB6EwWiCK9Ywmch3seRUyNoqdFM5mnBNfyEVYYBFefESsRpEa2IxF0hA

Sakata, Jun, et al. "Throwing Injuries in Youth Baseball Players: Can a Prevention Program Help? A Randomized Controlled Trial." The American journal of sports medicine 47.11 (2019): 2709-2716.

https://journals.sagepub.com/doi/full/10.1177/0363546519861378?casa_token=athplq2WtqcAAAAA%3Az0ahF8GqoIuExWd_sC5pUOB-qs5RB7XoOD4Gxbbke8B5CsJbaO8CsOScUPAwYj1WsvGCZ6le48ecd90

Endo, Yasuhiro, and Masaaki Sakamoto. "Relationship between lower extremity tightness and star excursion balance test performance in junior high school baseball players." Journal of physical therapy science 26.5 (2014): 661-663.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4047227/

Hyong, In Hyouk, and Jae Hyun Kim. "Test of intrarater and interrater reliability for the star excursion balance test." Journal of physical therapy science 26.8 (2014): 1139-1141.

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jpts/26/8/26_jpts-2014-044/_article/-char/ja/



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