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本日の話題:
ハンドボールにおけるスロー時の肩関節の運動
肩関節は,投球において下肢からボールへのエネルギ伝達に関わる運動連鎖の一部として,中心的な役割を果たしています.
そのため,ハンドボールのような投球のバリエーションの変化が肩の運動学と運動気理学の両方にどのように影響するかを調べることは興味深いことです.
近年,いくつかの研究で,ハンドボールにおける投球のバイオメカニクスが研究されてきましたが,肩のバイオメカニクスのレビューはありませんでした.
スコーピングレビューをすることで,研究者やトレーナー,医療従事者はハンドボールにおける肩の痛みの有病率や発生率が高いことを考慮すると,非常に重要な投球パフォーマンスの最適化,怪我の予防やリハビリテーションの方法をよりよく理解することができます.
しかしながら,肩のバイオメカニクスを測定することは肩関節周囲の軟部組織の影響もあり難しい場合があります.
したがって,このレビューでは肩の運動学の測定方法なども議論されています.
方法
合計19の文献がこのレビューに含まれました.
すべての研究で,コンタクトがなくディフェンスがいない状況で実施されました.
球速
球速が速い投球バリエーションの種類は,助走付きのスタンディングスロー,助走なしのスタンディングスロー,ジャンプスロー,ピボットスローの順でした.
球速に影響を与える他の因子は性別(男子>女子),腕の位置(サイドよりも高いオーバースロー),スキルレベル(エリート選手で速い),ボールの重さ(軽いほど速い)がありました.
球速と運動学との関係は,肩の内旋角速度が重要な因子であるようです.
肩の内旋角速度(MER〜ボールリリースまで)いわゆる腕の振りの速さが速いほど,球速も速いという結果でした.
他にも骨盤および体幹の内旋速度,上部体幹と骨盤の回旋のタイミング,ゴール方向への体幹の質量中心の速度,肘の角度の総変位量など多くのパラメータが球速と関連することが報告されていました.
関節角度
異なるバリエーションの投球の運動学を直接比較した研究はほとんどなく,大多数の研究では1種類の投球の運動学しか報告されていませんでした.
最大肩外旋角度(MER)は異なる種類の投球の間で差がないことがわかっています.
また,ボールリリース時の肩回旋の違いは,異なるボールの重さを使用した投球を比較した場合と,利き腕と非利き腕を使用した投球を比較した場合のみ差があったと報告されています.
オーバースローとサイドスローの比較では,サイドスローではボールリリース時の肩屈曲角度が有意に高く,肩外転角度が低いことがわかりました.
関節角速度
エリート選手とそうでない選手を比較した研究では,肩最大内旋角速度に有意を認めませんでした.
しかし,他の研究では様々な投球方法を比較したところ,最大肩内旋角速度に有意差が認められ,2種類の立ち投げではジャンプスローとピボットスローに比べて速くなっていました.
また前述したようにエリート選手とそうでない選手の肩最大内旋角速度には差がありませんでしたが,ボールリリース時の肩内旋角速度には有意差がみられ,エリート選手の速度が最も高くなっていました.
オーバースローとサイドスローの比較では,オーバースローの方が最大肩屈曲角速度が高かったようです.
タイミング
肘の最大速度はボールリリースの前0.066秒から0.055秒の間に達成され,肩の最大速度はボールリリースの前0.051秒から0.03秒の間に達成される.
肘伸展の最大角速度はボールリリースの0.004秒前から0.18秒前の間に発生し,肩内旋の最大角速度はボールリリース直後に発生する.
これらは投球のバリエーションや腕の位置,ボールの重さなどとは関係がありませんでした.
関節運動力学
ハンドボールにおける運動力学に関連する研究は1つのみでした.
ジャンプスローのボールリリースと最大肩内旋の間に発生する体重の38.3%の平均肩内旋トルクが報告されています.
また肩の運動力学は疲労プロトコルの影響を受けないことが発見されています.
結論
文献タイトル
Skejø, Sebastian Desisting, et al. "Shoulder kinematics and kinetics of team handball throwing: A scoping review." Human movement science 64 (2019): 203-212.