パラスポーツ

パラスポーツ選手の傷害・疾病発生リスクってなに?

パラアスリート選手をサポートする時って何か気を付けることありますか?
一般的なスポーツと同じで競技種目によって異なるので一概にこれとはいえないですね…ただ,少し視野を広げる必要はあるかと思います!最近の報告で傷害・疾病の発生リスクについて出ていたので一緒に見てみましょう
MUDA
へー,どんなことに気を付けないといけないんだろうか…

 

本日の話題:
パラアスリートの傷害・疾病の発生状況とリスクファクターについて

 

パラスポーツの歴史を知りたい方はこちらから

【第1回】パラスポーツってなんだろう

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この話が役立つと想定される方

・これからパラスポーツ選手のサポートを始めたい人

・パラスポーツ選手のサポートをしているが情報が少なくて困っている人

 

一般的なスポーツ選手と同様にパラリンピックを目指す選手も日々厳しい練習を続けております.

選手をサポートする側からすると,様々な状況を想定したうえで準備を進めますが,一般のスポーツ選手のサポートよりも幅広い視点で捉えてサポートしていくことが1つのポイントだと個人的には思っています.

この話がパラスポーツ選手のサポートで困っている人の助けになればと思います.

【はじめに】

  • パラスポーツの競技人口の増加やパラリンピックの規模が大きくなるにつれてパラスポーツ選手のスポーツに関連する傷害や疾病の状況を理解しようとする意識が高まっている
  • パラリンピック期間中に発生した傷害や疾病の報告では一般的なスポーツ選手と比較すると傷害や疾病の発生率は高いとされている
  • 競技期間中だけでなくトレーニング期間で生じる傷害や疾病の発生率,リスク因子を知ることでパラリンピック選手の健康状態を理解する助けとなる

【対象・方法】

  • 年齢18-65歳のパラリンピックプログラムに該当する選手150名をリクルート
    → 最終的に107名(参加率:71%)が参加
  • 52週間の期間で発生した"The sports-related injury and illness in Paralympic Sport Study"を調査

The sports-related injury and illness in Paralympic Sport Study (SPIIPS)

新たに発生した筋骨格系の痛みや感覚,傷害,病気,または心理的な訴えのこと.これはトレーニングや競技時間の損失だけでなく,通常のトレーニングや競技に対する感情の変化,活動時間,強度,頻度に影響を与えたものを全て含む.

【統計学的解析】

  • 発症事例を各カテゴリーの総暴露時間で除して発生率・発症率を算出
  • Mann-Whitney U検定またはKruskal-Wallis検定で各カテゴリー間の発生率・発症率を比較
  • カイ二乗検定で影響を受けた部位や身体別のサブグループ間の比較
  • Kaplan-Meier法で最初の傷害発生時期や発症時期を推定
  • ハザード比を用いたコックス比例ハザード分析で傷害や疾病の発生リスクの要因を評価

【結果】

傷害

  • 52週間で179件の傷害が発生しており6.9件/1000時間であった
  • 73人の選手が新たな傷害を報告しており,最初の受傷までの期間の中央値は19週間であった
  • 選手1人あたりの傷害発生の中央値は2(最小0-最大7)
  • 車いすユーザーと脊髄損傷の選手は上肢と肩の負傷が多い
  • 歩ける選手では下肢の損傷が多い
  • 視覚障がいの選手は下腿やふくらはぎの損傷が多く複数の損傷が報告された
  • 全傷害の59%は選手の障がいの影響を受けて発生したと報告された
  • 全傷害の68%は医療ケアを受けており診断がついた
  • 全傷害の32%は選手自身が予防できたと考えていた

 

疾病

  • 52週間で241件の疾病が発生しており9.3件/1000時間であった
  • 82人の選手が新たな疾病発症を報告しており,最初の発症までの期間の中央値は9週間であった
  • トレーニング強度が中等度の選手では高い疾病発症率
  • 選手1人あたりの疾病発生の中央値は2(最小0-最大11)
  • 車いすユーザーと脊髄損傷の選手は泌尿器科系の疾患の割合が高い
  • 歩ける選手では複数の疾患が報告された
  • 全傷害の22%は医療ケアを受けており診断がついた
  • 選手が考える疾病の原因はオーバートレーニングやストレス (45%),障がいおよび/または障がいに関連する薬 (28%),感染 (17%)であった

 

リスクファクター

    • 重症な怪我の経験があると新たに怪我をするリスク2.37倍
    • 男性は新たに怪我をするリスク1.76倍
    • チームスポーツに関わっている選手は新たに怪我をするリスク1.88倍新たな疾病リスク1.64倍
    • 夏季種目のチームスポーツの選手は疾病のリスク2.01倍
    • 以前重度な疾病を有したことのある男性は疾病のリスク2.13倍
なんとなく気を付けなければいけないことがわかりましたか?
MUDA
一般的なスポーツ選手で気を付けていることに加えて,疾病へのリスク管理が大切ということですね!
まずはそういう理解でいいと思います!今回は流してしまいましたが夏季種目や冬季種目の紹介なども少しずつ加えながら進めていこうと思います!
MUDA

余談

あくまで個人的な見解ですが,怪我が完治してない人は再発や他の部位へのストレス増大で新しい傷害が発生,男性は接触した時の衝撃が女性より大きいと予想されるため怪我をするリスクが高くなる,チームスポーツは他選手との接触頻度はあがるから怪我のリスクもあがる,チームスポーツの疾病はなんですかね…風邪とかの感染リスクが高くなるから?夏季種目のチームスポーツ選手は脊髄損傷の選手も多いと思うので尿路感染症,脱水,熱中症とかが増えるんですかね,重度な疾病を有したことがある男性で疾病リスクが高い理由については今のところこれといった理由がでてこないですね…わかったらまたお伝えできればと思います.

今日のポイント

  1. 脊髄損傷者では神経因性膀胱を呈していることが多いため,尿路感染症トラブルに気を配ることが大切です.
  2. チームスポーツでは特に健康チェックなどを重要視して感染症対策に努めることが大切です.特にパラアスリートは傷害よりも疾病の件数が多いというのは押さえておくべきポイントです.
  3. 車椅子ユーザーは常日頃から上肢を使うことが多いため,日常生活で少しでも休ませてあげられるような環境調整をしてあげることも場合によっては大切かもしれません.

 

文献タイトル

Fagher, Kristina, et al. "Injuries and illnesses in Swedish Paralympic athletes–a 52‐week prospective study of incidence and risk factors." Scandinavian Journal of Medicine & Science in Sports (2020).

https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1111/sms.13687

 

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