


本日の話題:
パラアスリートの筋骨格損傷とその特徴
パラアスリートは傷害よりも疾病が多いんです!そんな話はこちらから
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パラスポーツ選手の傷害・疾病発生リスクってなに?
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この話が役立つと想定される方
・アスリートとパラアスリートの傷害発生部位の違いについて知りたい人
・パラアスリートの筋骨格損傷の発生状況を整理したい人
一般的なスポーツ選手と同様にパラリンピックを目指す選手も日々厳しい練習を続けております.当然ですが,一般的なアスリートと同様に練習の強度が高まれば,傷害のリスクも高まりますし,筋骨格系のトラブル(肉離れとか,関節痛とか)に見舞われる選手も出てきます.
この話を通して,パラアスリートは一般的なアスリートと比べてどのような部位で発生リスクが高まるのか,どのような競技で注意が必要かを理解する手助けができればと思います.
【パラアスリートの現状】
パラアスリートは先天的あるいは後天的に障がいを持っており,残された動きや能力の中で自らの限界に挑戦しています.今回紹介するレビューに,パラアスリートと競技を取り巻く環境について記載がありましたので一緒に確認してみましょう.
特に障がいのある人(これはアスリートに限った話ではありません)では生活習慣病のリスクが高いことが知られており,そのリスクは4倍近くになるという報告もあります.そういった中で,パラアスリートは運動をしていない障がいのある人と比べて健康上の利点も多いというように言われています.しかし,運動をすれば傷害の発生リスクが高まるというのも事実です.今回のレビューの中ではどのようなパラアスリートで,どのような部位に骨格筋損傷が発生しているのかを理解しようという試みがなされました.もうひとつパラアスリートと障がい分類について,皆さんと情報を共有できればと思います.
上にお示しした資料は,パラアスリートが競技参加するにあたりどのように障がいを分類され競技が行われてきたのかについて昔と今で示したものを作成したものになります.以前は,医師が診断したもので障がい分類が行われていましたが,最近では競技を平等かつ見応えのあるものにするために,障がい分類に加えてその人にどれぐらいの機能が残っており,どれぐらい競技に影響してくるのかということが重要視されるようになってきました.これがいわゆるクラス分けというものの大枠と考えていただければと思います.
【レビューの結果】
開催時期別でみると
- 5人制サッカーは100人あたり31.4人に傷害が発生しており,ロンドンパラリンピックの22スポーツの中で傷害発生率が最も高かった
- パワーリフティングは100人あたり23.3人に傷害が発生しており,ロンドンパラリンピックの中で傷害発生率は2番目に高かった
- 車いすフェンシングの選手を対象としたコホート研究では73.8%が上肢の傷害を経験したと報告された
- 一般的にスキー選手は上級者よりも初心者で傷害発生率が高いが,パラスキーの選手では初心者よりも上級者で傷害発生率が高い
- パラアイスホッケー選手ではオーバーユースによる損傷が多く,重大外傷の発生も比較的多いスポーツだが,予防を目的としたトレーニング効果が少しづつ組み込まれて効果をあげている.
アスリートと比べると
障がいの違いで比べると
- アスリートと比べるとパラアスリートでは上肢の傷害発生割合が高い
- 障がい別で見てみると座位では肩,肘,手首の負傷が多く,歩ける選手では下肢の傷害発生率が高い
今日のポイント
- パラアスリートは障がいの違いで筋骨格損傷の好発部位が異なる
- アスリートと比較しても筋骨格損傷の好発部位が異なる
- 視覚障がいのチームスポーツや身体にかかる負荷が大きいスポーツでは筋骨格損傷が発生しやすい可能性がある



文献タイトル
Tuakli-Wosornu, Yetsa A., et al. "Acute and chronic musculoskeletal injury in para sport: a critical review." Physical Medicine and Rehabilitation Clinics 29.2 (2018): 205-243.
https://www.pmr.theclinics.com/article/S1047-9651(18)30014-7/abstract