

本日の話題:肩肘に負担がかかりやすい投球動作とは
投球動作とは
投球動作は最適なタイミングで,主に下肢と体幹の筋群によって発生したトルクを,ストライド,骨盤の回旋,体幹の回旋とともに上肢を介して伝達する運動です.
この運動連鎖によって,運動エネルギーの伝達が起こりますが,前のセグメントが最大角速度に達したときに後続のセグメントが回転を開始します.
いかに効率よくエネルギーの伝達を行えるかが重要になってきます.
エネルギーを変換する
投球動作は上図のような位相で分けられることが多くあります.
Wind-up phase :
非投球側の脚を上げて,身体重心を高く保ち,位置エネルギーを高めます.
Early cocking phase:
身体重心を下げながら並進運動を開始し,さきほどの位置エネルギーは並進エネルギーに変換されます.
wind-upで高めた位置エネルギーを運動エネルギーに変換するためにしっかりと身体重心を前方に移動させることが重要です.
いわゆるヒップファーストでの並進運動で身体を前方に動かし,wind-upで上げた脚を前方にステップします.
そのときの軸脚は蹴る意識よりも,ブレーキをかける意識の方がスムーズな重心移動が可能になります.
Late cocking phase :
前方にステップした脚が地面につき,下肢と体幹からのエネルギーを肩の潜在的なエネルギーに変換します.
骨盤と胸郭の分離で始まります.
このphaseは肩最大外旋(MER)までですが,このMER直前に肩の回旋トルクや肘外反トルクが最大となるといわれているので,肩肘に負担をかけないフォームのためには非常に重要なphaseです.
肩肘に負担をかけず,腕のしなりを出すためには,骨盤と胸郭の分離,いわゆる体幹の割れが重要です.
先ほどの並進運動で前方にステップしているのに対して,胸郭は反対側に回旋することでねじれが生じます.
雑巾絞りのようなイメージです.
このねじりが後述する回転運動を強めるわけです.
わかりやすいチェックポイントとしては,ステップした脚が先に前方に向いているということですね.
Acceleration phase :
いよいよ,ここまでの体内で発生した全てのエネルギーをボールに伝達します.
前述したねじりから生み出される回転運動と内旋筋による爆発的なパワーを利用して肩内旋します.
さらに肘伸展し,手関節屈曲し,ボールにさらなる加速を与えます.
Follow through phase :
ボールリリースした腕は肩内旋が続きますが,肩後方の外旋筋群で角速度の減速をはかります.
肩には体重の数倍の圧縮力がかかるといわれておりますが,肩外旋筋群の遠心性収縮によるブレーキングが重要です.
次のプレーに備えて,身体をフィールディングポジションに戻します.
肩肘に負担がかかりやすい投球動作(レビュー)
文献タイトル
Chalmers, Peter N., et al. "The relationship between pitching mechanics and injury: a review of current concepts." Sports health 9.3 (2017): 216-221.