

プロ野球選手でも肘の手術のニュースがあると,甲子園での投げすぎが・・・って言われるもんね.
2019,2020年のレビューから
本日の話題:青年期の野球選手における肩肘障害のリスクファクターについて
長く,楽しく野球生活を送るためには選手本人だけでなく,監督やコーチ,トレーナー,家族など周りの人たちの理解が必要です.
私も理学療法士の立場から,野球人の肩肘を守るための活動を行っています.
その上で正しい情報を提供するということを大事にしています.
世界では,効果的な予防方法を確率するために,少年野球の投手が障害を受けやすい根本的な病態生理とリスクファクターを明らかにすることに多くの研究がなされています,
ほとんどの研究では,主に使いすぎのメカニズムに焦点が当てられています.
投げすぎに関して,Major League Baseball (MLB) and USA Baseball が2014年にPitch Smart guidelinesを発表し,以下のような年齢に応じた投球数等の推奨がなされています.
上図の投球数制限と必要な休息の推奨に加えて,投球による障害に関与しているリスクファクターもあります.
ピッチスマートガイドラインの投球障害につながるリスクファクター
- 疲労がある中での投球
- 年間を通じて多すぎるイニングに登板
- 毎年野球からの不十分なオフ期間
- 多すぎる投球数と不十分な休息
- 複数日の連投
- 登板以外での過剰な投球
- 同時に複数のチームプレー
- 他の身体の部位に怪我をした状態での投球
- 不適切な日常のコンディショニングと筋力
- ショーケースでの安全対策を守らない
- 若くしてカーブやスライダーを投げる
- スピードガンの使用
これらがピッチスマートガイドラインで推奨されていることですが,文献的知見と合わせてどうなのかということがこのレビューです.
下の図に簡単にまとめました!
この6つのリスクファクターは,投球障害と明らかに関連しているものです.
2020年のレビューもスライドにまとめて紹介しますね.
今後のさらなる調査によって,他の要因も関連が明らかになってくると思いますが,いまのところ疲労した状態で多い球数を投げることは障害の原因になるといえそうですね.
しっかり休ませることも大事ということは,選手や指導者,保護者の方は理解しておいた方がいいですね.
多くのコーチが少年野球選手を守るためのガイドラインを知らなかったり,守らなかったりということがあるようです.
選手は休んだらいけないんじゃないかというプレッシャーのなかでプレーをしていることが多いかと思います.
そのなかでコーチの無理をさせない教養が重要になってきますね.
また,疲労を簡単に客観視できるツールが必要ですね.
加えて,速い球を投げる選手も注意が必要です.
速ければ速いほど,肩肘に大きなストレスがかかることは研究で明らかになっています.
メジャーリーグのトレーナーやチームドクターも球速は肘の障害のリスクファクターだと言っていました.
個人的には,プロ野球選手に関わらせていただくなかで,いいカーブを投げれる投手は選手生命が長いんじゃないかと考えています.
その根拠も含めて,いつかお話しできたらなと思います.
文献タイトル
Norton, Ryan, et al. "Risk factors for elbow and shoulder injuries in adolescent baseball players: a systematic review." The American journal of sports medicine 47.4 (2019): 982-990.
Salamh, Paul, et al. "Injuries and associated risk factors of the shoulder and elbow among adolescent baseball pitchers: A systematic review and meta-analysis." Physical Therapy in Sport (2020).